相続をきっかけに、法人と個人が共同名義で不動産を所有するケースが増えています。たとえば資産管理法人と親族がそれぞれ相続した場合などです。
しかしこのような「異なる性質の所有者」が共有名義で関与する不動産では、管理方針の不一致や売却時の意見対立など、深刻な共有トラブルに発展することも少なくありません。
本記事では、法人と個人が共同で相続した不動産に関するよくある課題と、その対処法・売却手段をわかりやすく解説します。
2026年3月決算に向けて整理したいと考えている法人担当者の方にも有益な内容です。
目次
法人と個人の共同相続|典型的なトラブル事例
まず、よくある共同相続の構図は以下のようなものです:
- 先代社長が死亡 → 法人に遺贈 + 個人(子供など)に相続
- 家族信託の失敗により、法人と相続人が共有者に
- 親族間で法人を設立 → 一部資産が法人名義、一部が個人名義
これらのケースでは以下のような問題が発生します:
- 不動産の管理費負担割合を巡る争い
- 法人側は売却希望、個人側は保有希望という方針の違い
- 固定資産税の支払い責任の押し付け合い
- リフォームや賃貸活用における合意形成の困難さ
共有状態のリスクとは
法人と個人の共同所有は、一般的な共有よりも複雑です。以下のリスクを伴います。
意思決定ができない
共有者の一人でも反対すれば、売却・改修・貸出といった処分行為ができません。法人は意思決定が早くても、個人が感情的になりやすい傾向があります。
税務処理が煩雑になる
法人と個人では不動産所得の扱いや譲渡所得の計算が異なるため、申告・会計処理も複雑化します。
相続の連鎖による権利の分散
個人側に相続が起きるとさらに共有者が増え、将来的に売却や管理がさらに困難になります。
トラブルを防ぐための対処法
1. 共有者間の話し合いを最優先
まずは法人と個人(もしくはその代理人)で意見交換を行い、将来の方針をすり合わせましょう。
売却・保有・買い取りなど、選択肢を比較検討する場を持つことが第一歩です。
2. 法人による個人持分の買い取り
個人側の共有持分を法人が購入することで、単独所有に切り替える方法です。
市場価格に基づいた価格交渉が必要となりますが、意思決定の一本化が可能となります。
3. 共有物分割請求(法的手続き)
協議がまとまらない場合は、家庭裁判所への共有物分割請求を検討します。
ただし、時間と費用がかかるため、最終手段とするのが一般的です。
売却を進める場合の具体的な選択肢
共有者全員の同意による売却
もっともスムーズな方法です。全員の売却意思が一致すれば、市場での売却または不動産会社による買取が可能です。
共有持分だけを売却する
法人または個人の持分だけを第三者に売却することも可能です。ただし、一般市場での売却は困難であるため、共有持分専門の買取業者などへの相談が現実的です。
直接買取での解決
地域の不動産会社による直接買取を活用すれば、共有状態でも持分買収や共有者調整の支援が受けられることもあります。
特に決算前に急ぎたい法人には有力な選択肢です。
よくある質問
法人と個人が共有していると、売却はできない?
全員の合意があれば売却は可能です。合意が取れない場合は、持分だけの売却や分割請求が必要になります。
法人が個人の共有持分を買い取ると税務上の問題はありますか?
市場価格での適正取引であれば大きな問題はありませんが、税理士と事前に相談することをおすすめします。
相続登記が終わっていない場合はどうすれば?
まずは相続登記を完了させ、共有者を明確にする必要があります。未登記のままでは売却も進められません。
まとめ
法人と個人が共同で相続した不動産は、感情面・法務面・税務面で複雑なトラブルを生むリスクがあります。
とくに法人側にとっては、意思決定の停滞や決算への影響が深刻な問題になりかねません。
- 早めの話し合いと方針の共有
- 法人による持分買い取りの検討
- 専門家(司法書士・税理士・不動産会社)との連携
状況が複雑なほど、早期対応が重要です。2026年3月決算を見据えた不動産整理を検討している場合は、今から準備を始めましょう。
