法人や個人事業主が保有する事業用不動産が、複数人または複数法人による「共有名義」となっているケースは少なくありません。
こうした不動産の売却は、通常の単独名義に比べて手続きが煩雑で、実務的な調整や法的リスクも伴うため、正しい知識と慎重な対応が求められます。
本記事では、共有名義の事業用不動産を売却する際の具体的な進め方、合意形成が難しい場合の対応、そしてスムーズな出口戦略としての直接買取についても解説します。
目次
共有名義の事業用不動産とは
事業用不動産とは、オフィス、倉庫、工場、テナントビル、店舗跡地など、収益または業務用に使用される不動産を指します。
これらの物件を複数の法人または個人事業主が共同で所有している状態が「共有名義」であり、売却の際には共有者全員の合意が原則必要です。
共有名義は次のような理由で生じることがあります:
- 複数の会社で共同出資して不動産を取得
- 事業パートナーとの共同所有
- 法人と代表者個人の共有
- 相続により法人と複数の相続人による所有
売却の基本的な流れ
1. 所有権・登記情報の確認
まずは法務局で登記事項証明書を取得し、共有者の氏名(または法人名)・持分比率を確認します。登記簿に記載された内容が正式な権利関係です。
2. 共有者との合意形成
共有者全員が売却に同意する必要があります。契約の方法や価格、売却タイミングについて事前に協議し、書面で残すことが望ましいです。
3. 査定依頼と条件整理
事業用不動産は立地・用途制限・建物構造などにより評価が大きく異なります。複数の専門業者へ査定を依頼し、売却条件を明確にします。
4. 売却方法の選択
仲介による売却、もしくは不動産会社による直接買取のいずれかを選択します。共有者の意見が一致しない場合、仲介は成立しにくいため、買取が有効なケースもあります。
合意形成が難しい場合の対応
持分のみの売却
共有者の一部が売却に応じない場合でも、他の共有者は自身の持分のみを売却することが可能です。
ただし買主が限定されるため、買取業者への売却となることが多く、価格が通常より下がる可能性があります。
共有者間での持分調整
事業上の合意を優先するために、共有者の中で持分を譲渡し合い、売却の判断を一元化する方法もあります。法人間での譲渡には税務上の注意が必要です。
法的手段の検討
交渉が困難な場合は、弁護士を介して共有物分割請求や調停手続きを行うこともありますが、時間・コストの負担が大きいため、まずは話し合いによる解決が理想です。
直接買取という柔軟な選択肢
合意形成に時間がかかる、または事業資金の早期確保を優先したい法人・事業主にとって、有効な選択肢が不動産会社による直接買取です。
直接買取のメリット
- 売却までの期間が短縮される(1ヶ月以内のケースも)
- 内覧や広告掲載などの手間が不要
- 老朽化や現況のままでも対応可能
- 複雑な権利関係でも検討対象となる
法人オーナーに適している理由
資金繰りの都合上、事業資産を速やかに現金化したい場合や、事業再編・撤退に伴い不動産を手放すケースなどで多く活用されています。
法人・個人事業主が注意すべきポイント
1. 税務処理と決算への影響
売却益が出た場合は法人税や所得税への影響が生じます。タイミングや処理方法を顧問税理士と連携して検討することが重要です。
2. 契約条件の明確化
共有者間での合意内容は、必ず書面化し、誰が代表して売却手続きを行うかも明記しておくことがトラブル防止につながります。
3. 将来のリスクと出口戦略
事業環境の変化や相続を見越して、共有状態を解消しておくことがリスク管理になります。現時点での売却は将来のトラブル回避にも有効です。
よくある質問
共有名義の事業用不動産でも法人名義で売却できますか?
法人が共有者であれば、その持分に関しては法人名義での売却が可能です。全体を売る場合は共有者全員の同意が必要です。
直接買取では、希望する価格で売れますか?
仲介よりも多少価格が下がる傾向はありますが、スピードや手間の削減といったメリットと比較して判断することが大切です。
共有名義を解消してから売却するほうが良いですか?
共有状態を解消してから売却することでスムーズに進むこともありますが、時間や費用がかかるため、状況に応じて検討が必要です。
まとめ
共有名義の事業用不動産を法人または個人事業主が売却する場合、共有者間の調整や契約の明確化、税務上の対応など、複数の実務的なポイントがあります。
特に全員の合意が得られないケースでは、直接買取という選択肢を活用することで、スピード感のある対応が可能です。
経営判断として不動産資産を適切に処分したい場合は、専門的なサポートを早めに受けることをおすすめします。
